皆さん、こんにちは!てつやです。
先日、こんな調査記事を見かけました。
taiziii社が、大企業の管理職200名に聞いた「業務引き継ぎに関する実態調査」です。
読みながら、胸の奥に何かが引っかかりました。懐かしさでも、後悔でもありません。もっと根っこにある、うまく名前のつけられない感覚でした。
イレギュラー対応の「判断の基準」が、一番引き継げていなかった

この調査によると、暗黙知が全社的な仕組みとして定着しているのは、わずか16.5%。一部の部署どまりが37.0%、組織的な取り組みに至っていないのが46.5%でした。
引き継ぎの手法は「口頭説明」と「既存マニュアル共有」が各53.5%で最多。専用ツールを使っているのは、わずか7.5%だといいます。
そして、引き継ぎで最も足りなかったと感じられていたのは、イレギュラーな状況での「判断の基準」でした。
手順は渡せる。でも、判断は渡せない。多くの現場が、同じ壁にぶつかっているようです。
定例は手順にできても、イレギュラーは言葉にできなかった

定年前、後任への引継ぎでうまく言葉にできなかったことがある、という話は、以前この記事で書きました。
👉 若い世代よりAIに強い?──「経験には賞味期限がある」という逆説の話
あの時は、経験には賞味期限があるという気づきで終わりました。でも、今回taiziiiの調査を読んで、あらためて当時のことを思い出しました。
定例的な作業は、手順が明確です。だから、ドキュメントに落とせました。
けれど一番厄介だったのは、イレギュラーな作業が起きたときでした。部内外の動向を察知し、半年先・一年先を見越してリスクを未然に回避する計画を立てる。年間の経費予算を超える支出が発生しそうになったとき、他の支出の時期をずらすのか、本部と交渉して追加予算を取りにいくのか。状況を見ながら判断し、調整を重ねていく。
こうした判断の連続を、自分は自然にやっていました。でも、どうしても言葉にできませんでした。
手順書は「起きたことにどう対応するか」は書けます。でも「起きる前に、何かが起きそうだと気づく」ことは、書きようがなかったのです。
一人で抱えていたことに、今気づく

当時は、こうした悩みを誰かに、まして機械に投げかけるという発想自体がありませんでした。全部、自分ひとりで抱え込んで考えていました。
今回、この記事を書きながら、初めてAIに問いを投げてみました。
「後任に、部内外の動向をつかんで半年先・一年先のリスクを見越す力を渡したかった。でも、どう伝えればいいのか、当時は分からなかった」と。
対話を重ねる中で、渡せなかった理由が、少し見えてきました。経験の中身が特殊だったからだけではなく、一人で考えている限り、それを言葉にする機会自体がなかったからかもしれません。
答えではなく、ものさしを渡す

自分がやってきたことを、そのまま渡そうとしていたこと自体が、そもそも無理な設計だったのだと思います。
渡せるのは「答え」ではなく、「ものさし」だったのかもしれません。何を見るか。何を優先するか。どこで立ち止まって判断するか。そのものさしさえ渡せていれば、後任は自分と同じやり方でなくても、自分たちなりの答えにたどり着けたはずです。
この対話そのものが、一つの図をなぞっていた

この1年半、AIとの対話を続ける中で、自分の思考がどう育っていくのか、一つの流れが見えてきました。違和感を持つ。AIにぶつける。違和感に気づく。問い直し、比べる。そして自分で判断する。この5つを繰り返しながら、少しずつ考えが深まっていく、という流れです。
今回のtaiziii記事をきっかけにした一連のやり取りは、まさにこの流れそのものでした。答えを最初から持っていたわけではありません。対話を重ねる中で、少しずつ輪郭が見えてきた。それだけです。
この流れについては、noteの方で図解も交えながら詳しく書いています。興味のある方はこちらもどうぞ。
👉 思考は、AIとの対話で育ち、地図となって、価値になる。──全4回のまとめ|note
あなたが誰かに渡せなかったものは、答えでしたか。それとも、ものさしでしたか。
この問いの続きを、「考える技術とAI」シリーズでは一つずつ整理しています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
それでは、また次の記事でお会いしましょう!
▼ 今回のヒントになった記事
・大企業の業務引き継ぎと暗黙知に関する調査記事(@IT)
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