── 成田空港の行列が教えてくれた「判断の地図」の欠如
皆さん、こんにちは!てつやです。
先日、こんなニュースが話題になりました。成田空港の税関で、「電子手続き」の列が従来の紙の申告よりもはるかに長い行列になっているというのです。
「時短のために導入したはずなのに、なぜ?」
この問いを読んで、私は「あ、これは知っている構造だ」と感じました。長年、会社で業務改善に携わってきた私には、「あ、これはあの失敗と同じだ」とすぐに分かりました。
今回は、この空港の事例をヒントに、ブログ作成やAI活用で私たちがついつい陥ってしまう「落とし穴」と、失敗を防ぐための「考え方の地図」について、私の実体験を交えてお話しします。
このエピソードは、こちらの記事で取り上げられていました。
👉成田空港の税関「電子手続き」が紙より遅い問題(2026年4月23日・共同通信)
何が起きていたのか ── 成田空港の「電子手続き行列」

財務省が推進する税関の電子手続き(Visit Japan Web)は、増加するインバウンドへの対応策として導入されました。
目的は「待ち時間の短縮と混雑の緩和」。2024年度の利用者は1,623万人にまで増えています。
ところが現場では、電子手続きの列が200メートル以上に延び、待ち時間は20〜30分。
一方、昔ながらの紙の申告は5分以内でスムーズに処理されていました。
原因として挙げられたのは2点です。
- 電子端末の数(58台)が有人ゲート(74台)より少ない
- 手荷物受け取りエリアと税関が同じ場所にある「構造的問題」
この「構造的問題」という言葉が、実はすべてを物語っています。電子化する前に、もっと根本的なことを見直す必要があった、ということです。
なぜこうなったのか ── 2つの「取り違え」
私がこの事例を聞いて感じたのは、2つの問題が重なっているということです。
① 現状分析が不完全だった

「電子手続きが遅い」という問題の表面だけを見れば、「端末を増やせば解決する」という発想になります。
しかし本当の問題は、荷物受け取りと税関手続きが同じ空間に集中するという「動線の構造」にありました。
「全体のどこで詰まっているのか」を確認しないまま対処すると、結局また別の場所で同じことが起きます。これ、現役時代に私も何度も見てきました(苦笑)。
② 「DX化(デジタル化)すること」が目的になっていた

本来の目的は「入国者のスムーズな通過」です。電子化はそのための手段のはず。
ところが、「電子手続きを普及させること」「利用者数を増やすこと」が評価軸になった瞬間、手段が目的に変わります。
利用者が1,623万人に増えても、列が伸びて体験が悪化するなら、目的は達成されていません。
私が現役時代に使っていた「問題解決の順番」

私は会社員時代、社内の業務改善を担当することが多くありました。
現場の担当者から
「この手順が不便で……」
「このシステムが使いにくくて……」
という相談を受けるたびに、私はまず以下のプロセスを踏むようにしていました。
- 業務の概要と、業務の全体フローを整理する
- その業務の最終的な目的を確認する
- 相談のあった課題が、全体フローのどの段階で起きているのかを確認する
- そのうえで、解決手段を検討する
なぜこの順番かというと、相談者は自分の業務を熟知しているがゆえに、「局所的な課題の解決」に目が向きがちだからです。
でも実際には、全体のフローと目的から課題の位置づけを見直すと、手順を見直すだけで課題そのものがなくなることが珍しくありませんでした。
実はこの経験が、私が「考える技術」を意識するようになった原点です。成田空港の事例も、この順番で考えていれば、「端末を増やそう」ではなく「動線を変えよう」という結論に至ったはずです。
これはAI活用でも同じ罠が起きる

AIを使い始めた方から、こんな声をよく聞きます。
「ChatGPTに入れてみたけど、なんか違う結果になった」
「新しいAIツールが出るたびに試しているけど、どれもしっくりこない」
「AIを使い始めたのに、以前より時間がかかっている気がする」
これらはすべて、成田空港と同じ構造です。
成田空港で起きた2つの取り違えを思い出してください。
- 現状分析が不完全だった
→ 全体最適ではなく、局所的な課題だけを見ていた - 「DX化すること」が目的になっていた
→ 手段と目的が逆転していた
AI活用でも、まったく同じ取り違えが起きています。
- 「今、自分はどこで止まっているのか」を確認せずに、AIに投げている
→ 問題の位置づけが見えていないまま、局所的な修正を繰り返している - 「AIを使うこと」が目的になっている
→ 「何を解決したいのか」が曖昧なまま、ツールだけが先走っている
「あ、これ私のことだ」と思った方もいるのではないでしょうか。
実は私も、そのどちらにも、見事にはまっていました。
成田空港に必要だったのは、端末の増設ではなく動線の設計でした。
AI活用に必要なのも、新しいツールではなく「判断の地図」、
つまり「目的→全体フロー→課題の位置づけ→手段」という考え方の順番です。
私自身、この取り違えに気づくまでに半年かかりました。
AIに何度指示を出し直しても、うまくいかない。
原因はAIの性能でも、自分のセンスでもなかった。
「今、自分はどこで止まっているのか」が見えていなかっただけでした。
この気づきをきっかけに、「考える技術とAI」というシリーズを書き始めました。
操作方法やプロンプトの話ではありません。AIを使う手前にある「判断の地図」を整理したものです。
まとめ ── ツールより先に「地図」を持つ

成田空港の電子手続き問題は、行政の話であると同時に、私たち一人ひとりの「道具との向き合い方」を映す鏡でもあります。
新しいツールや技術が登場するたびに「これを使えば解決する」と飛びつく前に、一度立ち止まって問い直してほしいのです。
- 自分の本当の目的は何か?
- 全体のフローの中で、課題はどこにあるのか?
- このツールは、その課題に本当に効くのか?
道具は変わる。
でも「地図を持って歩く」という姿勢は、どの時代でも変わらない知恵だと、私は信じています。
この問いの順番を、「考える技術とAI」シリーズでは一つずつ整理しています。
AIとの向き合い方で迷っていると感じることがあれば、こちらも読んでみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
それでは、また次の記事でお会いしましょう!

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